エネルギー関連施設見学レポート
九州エネルギー問題懇話会江上はエネルギー・環境問題への国内の対応状況について情報収集するために、さまざまなエネルギー関連施設を訪問 見学しています。
今回は2025年5月23日に茨城県那珂市向山にある国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構那珂フュージョン科学技術研究所の「トカマク型超電導プラズマ実験装置JT-60SA」 を見学しましたので、その内容をご紹介します。
見学施設
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構那珂フュージョン科学技術研究所
「トカマク型超電導プラズマ実験装置 JT-60SA」
ここは核融合エネルギーの早期実現のために、 国際熱核融合実験炉(ITER)計画と並行して日本と
欧州が共同で実施するプロジェクト 「JT-60SA計画」 を進めています。
具体的な活動としては、
① ITERと同じ形で高い性能を持つプラズマ運転を行い、 その成果の ITERへの反映
② 高出力の核融合炉実現のため、 高圧力プラズマを長時間 (100秒程度) 維持する運転方法の確立
③ ITER計画をはじめとする核融合研究開発を主導できる研究者・技術者の育成
に取り組んでいます。
見学レポート
施設見学に先立ち、 JT-60SA計画や施設の概要の説明があり、 その後、 展示物や各設備を見学し、その活動内容について説明いただきました。
主な内容
- これらの施設は太陽で発生している核融合によるエネルギー生成を目指しているもので、そのために太陽の中心の環境 (1,500万℃程度) を地上で再現することを目指しているそうです。
- その燃料には重水素、 三重水素 (トリチウム) を使用しています。 それらは1gで石油8t分に相当し、しかも、重水素は海中にあり、 海水1tに約33g含まれているとのこと。
逆に、トリチウムは自然界にはありませんが、 海中のリチウムから生成可能です。 - したがって、 海に囲まれている日本では燃料の自給自足が可能であり、 しかもCO2を排出しないので、経済安全上、 環境負荷 (問題) の面からもメリットが大きい発電方法といえます。
- この核融合を地上で再現するためには1億℃程度のプラズマを作り出す必要があり、 これがとても難しいそうです。 この超高温のプラズマを発生させるのに有望な方式としてトカマク型があります。これはドーナツ状にプラズマを作りそこに電流を流します。このプラズマと真空容器の間にブランケットという箱を並べ、 リチウムやベリリウムを挿入することで、 燃料(トリチウム)の生成ができ、 また、 熱回収をすることでタービンを回し電力を得られるということです。
- しかも、 核融合には連鎖反応がなく、 燃焼して減少した燃料を適宜、 必要な分だけ補充して運転するため、 固有の安全性を確保できます。しかも、 廃棄物に関しては、 中性子が放射性同位体を生成することもありますが、 原子力発電による放射性廃棄物に比べ管理期間は非常に短いという点もメリットとして挙げられます。
- 投入するエネルギーに対し、 30~50倍の出力が出せないとエネルギー供給源として成立しないとされています。 現時点で1.25倍の出力を出せることが実証できています。
- 今後は世界に先駆けて2030年代の核融合施設建設を目指しているとのことです。
磁場コイルや各種計測器の内容、 開発プロセス等について説明を受けました。実際に見学することで外部から見ているだけでは分からない設備構成や開発の背景などが聞け、 より理解を深めることができました。
ITERはいつ頃完成するのでしょうか?
完成時期は現時点では未定です。イーターからの提案を受け、各国は2032~33年に試験を実施予定です。
JT-60の稼働時間は30秒である一方、JT-60SAはどの程度稼働できるのでしょうか?
プラズマ電流で加熱できるのは100秒程度です。