特集「どうする?これからの日本のエネルギー」

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各エネルギーの特性 1石油 Petroleum

世界の原油確認埋蔵量

石油は、自動車の動力源、合成繊維やプラスチックなどの化学製品の原材料、工場や家庭用の熱源など、幅広い用途に使われており、我々の生活に欠かすことのできない大切なエネルギーです。発展途上国も含め、世界中で幅広く利用されています。その理由としては、用途が広いことに加え、石油ストーブの例でも分かるように液体で取扱いが容易であるという点が挙げられます。

日本では、石油危機以降、一次エネルギーにおける石油の依存度を年々低下させ、2010年には4割まで減らしてきています。

石油資源の分布を見てみますと、特定の地域に偏っており、確認埋蔵量の約5割を政治情勢が不安定な中東地域が占めています。

日本の中東への依存度は、一時68%まで低下していましたが、再び上昇に転じ、現在は83%となっています。これは、中国やインドネシアなどの産油国が資源の枯渇や自国消費への振り替えにより、日本への輸出を減らしたためです。

石油の供給国別輸入量と中東への石油依存度の推移

一方、原油価格を見てみますと、2014年の夏以降、急激に値下がりしてきおり、現在60ドル/バーレル前後となっています。日本の原油輸入(CIF)価格を見ても、ここ数年1キロリットル当たり7万円前後だったものが、現在では4万円前後まで値下がりしてきています。

価格の下落要因として、需要面では、世界的な経済の停滞により石油需要の伸びが鈍化してきたこと、また一方、供給面では、非在来型のシェールオイル等の開発が進み、需給が緩和してきたことが挙げられます。これまで価格の値下がり局面などでは、需給を調整してきたOPECが減産を行わず、OPECの盟主で世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアが現在の状況を容認していることから、当面、原油価格は軟化基調で推移するものと予想されます。しかしながら、シェールオイル等の採算コストは、40〜70ドル/バーレルと言われており、原油価格の下落は新たな開発を鈍らせるものと考えられます。また、鈍化したとは言え、中国やインドなどの新興国のエネルギー需要は、将来的にも増加が見込まれており、中長期的には、需給がひっ迫する可能性があります。

今後、日本としては、供給源の多様化や資源国との互恵的、戦略的な関係の構築を進めるとともに、中東依存、更には石油依存のより一層の低減が必要です。運輸や化学製品部門では、エネルギーや原材料が石油でなければならいないものが多くあり、こうした分野でのエネルギー転換は難しい状況にあります。また、省エネについても、日本の技術は既に世界最高水準にあり、約30年間で37%もの省エネを達成していますので、今後、省エネでの大幅な削減は容易ではありません。このため、発電用や熱源など他のエネルギーで代替が可能なものから、順次、エネルギー転換を進めていく必要があります。

石油の用途日本の原油輸入価格の推移

 
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