情報誌「TOMIC(とおみっく)」

58号 2018年10月発行(1/4)

  • 印刷
  • PDF
 

TOMIC第58号 電気の品質と再生可能エネルギー〜再生可能エネルギーで電気が不安定になる!?〜

一般財団法人 電力中央研究所 システム技術研究所 副所長
永田 真幸
(ながた まさき)

1996年、東京大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。
同年電力中央研究所に入所、現在は主に電力系統の解析に関わる研究に従事。
電力中央研究所は1951年に設立され、さまざまな分野の研究者を擁して電力事業に関連する研究開発を行う一般財団法人。


家庭や工場などに毎日送り届けられ、私たちの生活を支えている電気。発電の方法について気にしている人は多くいますが、発電した電気を家庭や工場などへ届ける作業、いわゆる送電についてはあまり知られていないのではないでしょうか。送電には電気の品質を維持するために、さまざまな工夫や苦労があります。近年は再生可能エネルギーの増加に伴って新たな課題も生まれてきました。電力中央研究所の永田真幸氏に、電気の品質と再生可能エネルギーの関係について伺いました。

電気の品質を決める “電圧”と“周波数”

電気の品質を決める大きな要素に電圧と周波数があります。電圧はボルト(V)で表わされ、例えば一般家庭の場合は標準電圧が100Vで、101Vの上下6Vを超えない範囲を維持すべきと国によって定められています。周波数はヘルツ(Hz)で表わされ、現在は東日本が50Hz、西日本が60Hzとなっており、電力会社では、±0.1〜0.3Hzの範囲で維持するよう常に調整を行っております。

電圧や周波数が多少変動しても、一般家庭ですぐに大きな影響が現れるわけではありません。しかし、精密機器を扱っている工場などには少なくない影響があります。電圧や周波数が大きく変動するということは、その電気を使っている機器に大きなストレスがかかるということです。そのため機器が壊れたり、寿命が短くなったりすることが考えられます。また機器の動作が不安定になることにより、その機器で作っている製品の品質が低下したり、工場の製造ラインが停止するなどの影響が出ます。

需要と供給を常に一致させる必要がある電気

電気の品質を保つ上で、重要なことは需要と供給のバランスをとることで、電気の発電量と消費量がいつも一致する“同時同量”が必要不可欠です。電気のつくり過ぎや不足でバランスがくずれると、電圧や周波数が不安定になり、最悪の場合は発電機が次々に停止し、広範囲で停電が発生することもあります。

電気の需給バランスイメージ

つくりすぎた電気は貯めておけばいい、と考える人もいると思います。確かに技術的には電気を貯めることは可能ですが、残念ながら現時点では広く大量に利用できる状況にはありません。課題のひとつはコストです。現在の蓄電池はたいへん高価で、加えて電池単体だけでなく周辺機器を整備する必要があり、大量に導入すると電気料金を大幅に上げなければなりません。もうひとつの問題は効率性で、現在の蓄電技術では、せっかく発電した電気の70%ほどしか活用できません。さらに電池は劣化するので寿命の問題もあります。現状では高価で効率が悪く、長期間使用できない電池はあまり実用的とはいえず、更なる技術革新が必要です。

 
ページの先頭へ戻る