情報誌「TOMIC(とおみっく)」

57号 2018年2月発行(1/4)

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TOMIC第57号 これからの再生可能エネルギーを考える〜九州の現状と未来を支えるためのエネルギーミックス〜

社会保障経済研究所 代表
 石川 和男
(いしかわ かずお)

1965年生まれ。1989年、東京大学工学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁などで、エネルギーをはじめとする諸政策分野に従事。2007年退官。東京女子医科大学特任教授、政策研究大学院大学客員教授、内閣府・規制改革会議専門委員などを歴任。現在は社会保障経済研究所代表を務める。社会保障関連産業政策論、エネルギー政策論、公的金融論、行政改革論などについて政策研究・提言を行うほか、関連著書も多数。


東日本大震災以降、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、国民の身近なエネルギーになりつつあります。その一方で「安全」「クリーン」といったイメージだけが先行し、その実態についてはあまり知られていないのが実情です。今回は社会保障経済研究所代表の石川和男氏に、再生可能エネルギーの現状や課題、さらに未来における活用法についてお聞きしました。

「脱原発」の旗印として一気に普及した再エネ

私が通産省(現経産省)にいた1990年代に、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの担当をしたことがあります。けれども当時の日本はもちろん、世界的に見ても再エネに対する関心はまだ薄かったと思います。研究はしているけれども実務には使えない状態でした。2000年を超えた頃から変化が起こり、まずドイツを中心としたヨーロッパで再エネの導入が始まります。日本でも大口電力の自由化や太陽光発電の余剰電力買取制度など、現在につながるさまざまな取組みが始まりますが、それでも大きな話題にはなりませんでした。

再生可能エネルギーが爆発的に社会的議論を引き起こしたのは、やはり2011年3月11日に発生した東日本大震災以降です。「脱原発」の旗印として、マスコミが一斉に再生可能エネルギーをアピールするようになりました。さらに2012年7月にはFIT(固定価格買取制度)が施行され、一気に普及していきます。休耕田のような土地が余っていた農家などが太陽光パネルを設置するようになったのです。

再生可能エネルギーによる設備容量の推移

そして現在では、再エネバブルの様相を呈しています。政府は2030年の電源構成目標を定めていますが、すでに太陽光は認定量だけで目標の150%に達し、風力はもうすぐ認定量に到達します。ただし、このうち実際に稼働しているのは太陽光で4割、風力で1割程度です。それでも急激に増えすぎたため、現在では買取価格の引き下げや入札制度の導入など、抑制の方向へ動いています。

2030年の電源構成

太陽光、風力以外の再生可能エネルギーとしては、木くずや間伐材を使った木質バイオマスが注目を集めていますが、こちらも2017年度に認定が急増しています。今後、買取価格の引き下げや入札制度の導入が予想されるため、駆け込み認定が増えているのです。

木質バイオマス発電の仕組み

 
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