情報誌「TOMIC(とおみっく)」

56号 2017年10月発行(2/4)

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TOMIC56号 日本経済の成長とエネルギー〜海外のエネルギー事例から考える日本の現状と未来〜

世界の政治も左右するエネルギー問題

日本の経済が上向くためには、製造業の復活が欠かせないと考えています。日本のGDPに占める製造業の割合は約20%もあり、先進国の中ではドイツと並び製造業の比率が非常に高い国です。

「製造業復活」という課題は日本にだけ言えることではありません。じつは、アメリカやイギリスでも同じような状況が起こっているのです。

アメリカのトランプ大統領は「アメリカファースト」と言っていますが、このことは「アメリカファーストのエネルギー政策」と言い換えることができます。エネルギーコストを安くして競争力を高め、製造業の復活を狙っているのです。アメリカでは製造業における雇用が300万人も減り、これらの人々は介護・福祉や観光の分野に移りました。ところが、これらの分野は給料が相対的に安いのです。不満を持った人々がトランプ氏を大統領に当選させました。

EUを離脱したイギリスも似たような状況です。イギリスでも製造業の雇用が100万人減り、介護や観光などの分野に移りましたが、やはり給料が相対的に安い。とりわけ製造業の比率が高かった地方では不満が高まり、EU離脱に賛成票を投じたのです。

世界的に見ても製造業の比率が高い日本は、アメリカやイギリスよりさらに深刻です。日本でも製造業の雇用が減り、相対的に給料の安い介護や観光の分野に労働者が移動していますが、こうしたサービス業だけでは経済は成り立ちません。核となる製造業が復活しないと社会が立ち行かなくなります。

アメリカは先進国の中で最も電気料金が安い国ですが、そのアメリカでさえエネルギーコストを意識しています。日本はエネルギーのほとんどを輸入しており、自給率は6%(2014年度実績)しかないにも関わらず、エネルギーコストに対する意識が低すぎると思います。本当にこのままでいいのか考えるべきでしょう。

 
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