情報誌「TOMIC(とおみっく)」

54号 2016年10月発行(1/3)

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TOMIC第54号 高レベル放射性廃棄物の地層処分〜世界的に認められている地層処分について正しい認識を〜

九州大学大学院 工学研究院 エネルギー量子工学部門
教授
 出光 一哉
(いでみつ かずや)

昭和55年、九州大学工学部応用原子核工学科卒業。昭和57年、同大学大学院工学研究科応用原子核工学専攻修了。同年、動力炉・核燃料開発事業団東海事業所入社。平成元年より九州大学助手、平成5年に同助教授、平成14年より九州大学大学院工学研究院教授を務める。平成5年、九州大学にて工学博士取得。


前回に引き続き、放射性廃棄物の処分について九州大学大学院教授の出光一哉氏にお話を伺います。今回は世界的に処分の動きが始まっている高レベル放射性廃棄物について、より詳しい説明をしていただきました。原子燃料サイクルにおける再処理の重要性や、世界の主流となっている地層処分についての考え方もお聞きします。エネルギーの恩恵を受けてきた私たちの世代が何をすべきなのか、考えてみたいと思います。

ウラン資源の有効活用を図る原子燃料サイクル

原子燃料サイクル〈図1〉
ガラス固化体の製造イメージ〈図2〉
高レベル放射性廃棄物の減容化の比較〈図3〉

原子力発電所で使われるウラン燃料は、発電の際、わずか3〜5%しか消費されず、残りの95〜97%は再利用が可能です。そこで、発電所で使い終えた使用済み燃料から再使用可能なウラン、プルトニウムを回収して、再び原子力発電所の燃料として発電に利用するのです。これを「原子燃料サイクル」といいます。〈図1〉

使用済み燃料を再処理する過程で、放射能レベルの高い廃液が発生します。この廃液は融かしたガラスと混ぜ合わせ、ステンレス製の容器に入れて固めます。これがガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)です。〈図2〉

原子燃料サイクルのなかで使用済み燃料の再処理を行うことで得られる二つの大きなメリットがあります。

一つはウラン資源の有効活用です。使用済燃料の9割以上はリサイクルが可能です。 現在17,000トンの使用済燃料体が国内にありますが、解体・再処理を施すと合計4,000トンの燃料を得ることができます。東日本大震災以前に日本が使用していた原子力発電の燃料は年間約1,000トンだったので、ほぼ4年分のエネルギー資源に相当します。

リサイクルされ新しく生まれ変わった燃料は「準国産のエネルギー資源」といえます。エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている日本において、エネルギーの安定供給を高めるためにも必要な取組みなのです。

二つ目は高レベル廃棄物の量を減らすことができることです。使用済燃料をそのまま処分する場合に比べて、再処理することで廃棄物の体積は1/4になります。〈図3〉加えて半減期の長いウランやプルトニウムが再利用のために取り除かれるので、放射能そのものも少なくすることができます。

そのため、使用済燃料をそのまま処分した場合は、放射能が天然ウランと同程度に低下するには10万年ほどかかりますが、再処理後は8,000年程度と約1/12に短縮されます。

 
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