情報誌「TOMIC(とおみっく)」

49号 2014年3月発行(3/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2014年 第49号 九州エネルギー問題懇話会 シェールガス革命、日本への影響 エネルギー多様化社会に生きる日本

シェールガス輸出に対する米国世論と輸出手続き

シェールガス輸出に対する米国内の世論は、ひとつにまとまっているわけではありません。シェールガスを国際市場に出すと輸出向けのガス価格が上がり、それによって国内のガス価格を押し上げてしまうのではないかという輸出反対論が根強くある一方で、ガス価格が低迷したままでは生産者側の事業継続が難しいため、輸出を認めて欲しいという意見もあります。

シェールガスを米国から輸出するには、天然ガスに関する法律に則する必要があります。自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に対しては、基本的には申請をすればほぼ自動的に許可されますが、日本はFTAを締結していないため、自動的に輸出許可とはなりません。

このため、野田前政権が日米首脳会談の際にLNGの輸出促進を依頼するなど、日本も米国に対し、FTAを締結していない国に輸出するための許可促進を継続的に働きかけています。

〈図-5〉日本企業における輸出プロジェクト

日本などFTAを締結していない国への輸出を計画するプロジェクトは、個別案件ごとに輸出申請を行い、それが米国の公共利益に適うと判断されれば連邦政府エネルギー省から輸出が許可されることとなっています。

2013年5月には、大阪ガスと中部電力がコミットしたフリーポートのプロジェクトが日本向けとして初めて許可され、続いて9月には東京ガスや関西電力が購入を目指しているコーブポイントのプロジェクトにも許可が下りました。

但し、1件ずつ審査を行うため、許可が出るまでに1、2年かかっているのが現状で、三菱商事と三井物産が参加しているキャメロンプロジェクトは、当初の予定していた許可のタイミングが若干ずれ込み、2014年2月に許可されました。〈図-5〉

日本企業の資源調達の変化

これまで日本の企業は、単にガスを買い付けるだけでしたが、最近は、生産側の事業をコントロールできるようプロジェクトに投資し、事業に参画するようになってきています。

現在、米国のガス価格は低迷しており、投資への減損処理を強いられる外国企業もある中、投資先を選択し、参画するタイミングを見計らうのは容易なことではありません。

投資には常にリスクが伴いますので、日本企業がLNGの設備やガス田の開発などへの投資を行う場合には、しっかり見極める目を持つことが大切です。

一方、原材料費が大きく影響する石油化学産業では、拠点を米国に移す動きも見られます。原材料の調達コストを抑えながら、日本の強みとする品質管理の面で勝負をかけようとしているものと思われます。

 
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