情報誌「TOMIC(とおみっく)」

48号 2013年10月発行(4/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 2013年 第48号 九州エネルギー問題懇話会 PWR型原子力発電の特性と福島第一事故以降の原子力発電の安全への取組み 加圧水型軽水炉(PWR型)原子力発電プラントメーカー「三菱重工業株式会社」に聞く

Q6.福島第一事故を踏まえた、PWR型の安全対策への取り組みについて教えてください。

移動式大容量発電機車 可搬式ポンプ 移動式大容量ポンプ車 水密扉

A.PWR型は、前述したように、地震・津波によって電源を喪失、あるいは海水ポンプが損壊し最終ヒートシンクを喪失するような事態に陥っても、原子炉等を冷却する機能を維持する手段を持っており、また、水素爆轟も起こらないと考えています。

しかしながら、安全機能を強化する観点から、事故直後より@非常用電源の増強A冷却機能の強化B津波・耐震対策強化を基軸に各種の対策を図ってきています。

非常用電源については、大容量の発電機車や直流電源等を追加設置しており、将来的には恒設の非常用空冷式発電機の設置も計画しています。冷却機能では、可搬式ポンプや大容量のポンプ車等を配備し、冷却・注水機能を強化しています。津波・耐震対策としては、所内の電源設備や非常用発電機室等の水密化対策を実施しています。更には、変電所・開閉所の耐震性強化等も計画されています。

また、万一炉心損傷が発生した場合、原子炉格納容器の破損防止対策として、格納容器スプレイによる冷却や格納容器の自然対流冷却(格納容器再循環ユニット)によって蒸気を凝縮し、内部圧力を低下させることができますが、念のための設備として、放射性物質をろ過する機能を設けた格納容器フィルタ付ベント装置を設けることで、更なる安全強化を目指しています。(図6)

図6)原子炉格納容器の破損防止対策

Q7.現在、我が国では、今後のエネルギー政策について議論が続けられていますが、どのような方向に進むべきであると考えますか?

A.資源の乏しい日本において、国家のエネルギー政策はとりわけ重要な課題であり、CO2の増加による地球温暖化問題や安定的な資源の確保(エネルギーセキュリティ)、更には経済性等も踏まえながら、慎重かつ冷静に議論されるべきです。

現在の主たるエネルギー源である化石燃料にも、将来的に期待される再生可能エネルギーにも懸念や課題があり、これらですべての国内電力を賄うことにはリスクがあると考えています。そのため、当社としては、原子力も一つの重要なエネルギー源として必要不可欠であると考えています。

Q8.原子力発電の安全性確保および信頼回復に向けて、今後どのような取り組みを行われますか?

A.当社としては、福島第一の事故を深刻に受け止め、原子力プラントの安全性・信頼性の更なる向上に努め、電力の安定供給に貢献していくことがメーカーとしての社会的責任であり、使命であると考えています。

平成25年7月8日の新規制基準の施行により、原子力規制委員会による国内原子力発電所の再稼働に向けた審査が始まりました。現在、当社においても再稼働に向けた各種安全評価作業や各原子力発電所での安全性向上対策工事が本格化しています。設計(基本計画/基本設計/詳細設計)から製作、据付、アフターサービスに至るまで、一貫して対応できる国内唯一のPWR型プラントメーカーとして、更なる原子力発電所の安全性向上を目指し、総力を挙げて電力会社を支援していきたいと考えています。

 
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