九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.19 脱炭素化に貢献する原子力発電の未来(4/4)

 
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Vol.19 脱炭素化に貢献する原子力発電の未来

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発電だけではない原子力の可能性

次世代炉については海外での開発が先行しています。米国NuScale社が開発中のSMRプラントは、2029年の運転開始を目指して建設計画が進んでおり、日本からもIHI、日揮が出資しています。英国ロールスロイス社が主導する企業連合もUK SMRと呼ばれる小型軽水炉を開発中です。またロシアでは、世界で唯一のはしけに載せた軽水炉アカデミック・ロモノソフ号が稼働しており、資源が乏しく、輸送も難しい極東地域などで利用されています。日本でも次世代炉開発に取り組んできましたが、技術革新を図るため、海外の開発案件にも積極的に参画していく方針です。

原子力の利用法は発電だけではありません。例えば前出の高温ガス炉では、950℃の高温の熱を利用して水素を製造する研究が行われています。この方法は熱化学法ISプロセスと呼ばれ、現在のところ日本だけが成功している技術です。原子力をさまざまな分野に応用していくことにおいて、日本はトップクラスの技術を持っているのです。水素はカーボンニュートラル実現に重要な役割を担いますが、その製造方法が課題となっています。高温ガス炉にはカーボンフリー水素を安価に大量に供給できる可能性があるのです。

藤本登氏

このように、原子力にはさまざまな可能性がありますが、放射線への不安から拒否反応を示す人も少なくありません。イメージだけで判断せず、事実や知識をもとに対話できる人が増えていってほしいと思います。

 
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