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Vol.11 原子力の歩みとエネルギー

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福島の事故を教訓にさらなる安全性を追求

東京電力福島第一原子力発電所の事故があったとき、私は日本原子力研究開発機構で仕事をしており、茨城県にいました。当時は原子力発電所であのような事故が起こるとは思っておらず、原子力に携わる者として深く反省しています。事故を想定した安全マニュアルはありましたが、マニュアルを運用する人の問題があったと思います。具体的には、マニュアルにないことが起きたときにどうするのか、体制をどうつくるのかということが考えられていなかったということです。

この教訓をもとに、原子力の新しい規制基準では、これまでの安全対策の強化に加え、想定外の事故も考慮した安全基準が設けられています。その内容は安全設備などのハード面、マニュアル等のソフト面ともに以前より格段に改善されていると思います。

さまざまな可能性を秘めた高温ガス炉を研究

私は、大学入学以来約35年間にわたり原子力に関わる研究に従事してきましたが、専門としているのは高温ガス炉です。高温ガス炉は、原子炉の炉心に用いる主な材料が黒鉛を中心としたセラミックで、核分裂で発生した熱を取り出す冷却材には化学反応を起こしにくいヘリウムガスを用います。世界で主流となっている軽水炉では原子炉から取り出せる熱の温度は約300℃ですが、高温ガス炉では、耐熱性に優れたセラミック材料を使うことにより約1,000℃の熱を取り出せます。燃料の回りはセラミック材が4重に被覆され、さらに炉心に使われている黒鉛材料は熱容量が大きく、異常が起きても炉心の温度変化が緩慢なことから、冷却材であるヘリウムガスがなくなった場合でも、炉心で発生する熱は原子炉の表面から放熱され、自然に冷却されます。したがって、福島の事故のように燃料が破損する恐れはありません。私は「うちの隣にあっても大丈夫」と言っています。

さらに高温ガス炉は、熱の利用方法の工夫により効率を高めることができること、さらに、原子炉の安全性が高いので安全対策の設備が簡素化できることから、経済性にも優れた原子炉です。また、発電以外でも高温の熱を利用できるため、水素製造や化学工業などさまざまな分野で活用できます。大きな可能性を秘めた新型の原子炉で、世界でも改めて評価されてきています。

高温ガス炉の被覆燃料粒子

 
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