講師コラム「エネルギーの明日」

エネルギー・環境問題の専門家に、毎回、様々な角度からエネルギーの視野を広げるお話を伺います。

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Vol.11 原子力の歩みとエネルギー

九州大学 大学院工学研究院 エネルギー量子工学部門 教授
藤本 望 氏

10月26日は「原子力の日」です。この日は、1963年に日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)が動力試験炉で日本初の原子力による発電に成功した日です。また、1956年に日本が国際原子力機関(IAEA)への参加を決めた記念すべき日でもあります。学生時代から一貫して原子力の研究に携わり、日本原子力研究所にも長年在籍されていました九州大学教授の藤本望氏に、これまでの原子力の歩みや今後の可能性についてお話を伺いました。

藤本 望 氏

日本における原子力の歩み

人類の原子力の利用は、ウランの核分裂が発見された1938年に始まったと言えるでしょう。ほぼ同じ頃、規模は小さいながらも日本でも原子力に関する研究が始まりました。第二次世界大戦中は不幸にも兵器としての利用が求められましたが、戦後、日本では一貫して原子力の平和利用を目的に、海外から技術を導入して、「追いつけ追い越せ」の精神で原子力の研究は発展してきました。現在では世界でもトップレベルの技術力を持つ国となっています。日本の原子力開発の独自性は、導入した技術をより高度に発展させていくことにあります。性能や効率を上げて、安全性や信頼性を向上していくことが非常にうまく、優れた品質のものを生み出しています。

そもそも日本が原子力の研究に着手したのは、資源を持たない国であることが大きく影響しています。エネルギーを効率よく大事に使うという考え方が反映されているのです。

これからの日本は少子高齢化が進み、人口減少時代になっていきますが、安定的なエネルギーの確保はますます大切になってきます。また、これまでのように経済成長を続けていくには原子力発電においても国内に留まらず海外展開が必要になりますが、そのためには更なる安全性、経済性を目指した研究開発が重要になってきます。

主要国の一次エネルギー自給率比較(2015年)

 
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