講師コラム「エネルギーの明日」

エネルギー・環境問題の専門家に、毎回、様々な角度からエネルギーの視野を広げるお話を伺います。

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Vol.8 原子力の安全性と人材育成

九州大学 大学院工学研究院 エネルギー量子工学部門 教授
守田 幸路 氏

原子力の安全性確保については近年ますます重要性が増しています。九州大学教授の守田幸路氏は、原子炉の安全性をテーマに長年研究を行ってきました。原子炉の安全評価や次世代原子炉の開発に加え、原子力に関わる人材の育成にも力を入れています。「福島のような事故は2度と起こさない」という強い信念で研究・教育に当たる守田氏にお話を伺いました。

守田幸路氏

原子力の安全性について研究開発

原子力にはさまざまな研究分野がありますが、私が研究しているのは原子力の安全性、とりわけ熱流動工学の分野です。これは熱の動きや流体の動きを調べる専門分野で、原子炉が事故を起こした場合、原子炉の中で熱や流体がどのように移動していくのか、その結果、原子炉がどのような振舞いをするのかを研究しています。例えば、福島のように原子炉が壊れてしまうような事故は過酷事故(シビアアクシデント)と呼ばれますが、このような事故が起こることを防ぎ、例え起こったとしても事故の影響を出来るだけ少なくするための対策を講じることが大切です。こうした対策には、過酷事故で起こることをコンピュータ上でシミュレーションして予め把握しておくことが必要です。私の研究では、その結果が正しいか、過酷事故ではそもそもどのような事が起こるのかをいろいろな実験を通じて検証・確認しています。

原子力は総合工学です。私のような熱流動工学の専門家だけでなく、構造、機械、流体、安全さらには地震など、関連するさまざまな分野の研究者が集まって原子力の安全を支えています。日本原子力学会には原子力の安全性について議論する専門家グループがあり、いろいろな分野からの研究者が参加しています。

 
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