九州エネルギー問題懇話会トップページ講師コラム「エネルギーの明日」Vol.5 エネルギーと地球環境(1/5)
エネルギー・環境問題の専門家に、毎回、様々な角度からエネルギーの視野を広げるお話を伺います。
九州大学 アイソトープ統合安全管理センター 教授
百島 則幸 氏
人類は自然界からエネルギーを得ることで文化的な生活を営んでいます。その一方で、エネルギーを消費することで地球環境に多大な影響も与えています。今回は環境問題に詳しい九州大学教授の百島則幸氏に、エネルギーと地球環境にまつわる問題を伺いました。
日本の江戸時代は使用するエネルギーも少なく、ものを大切にする循環型社会でした。一例を挙げると、調理で出る野菜クズは畑に戻し、人間の排泄物さえも肥料として使っていました。使えるものは捨てずに再利用することを徹底していたのです。このように江戸時代にはリサイクルされていたものの多くが、現代社会ではゴミとして処分されるようになりました。
産業革命以降、人類は新しいエネルギー源を手に入れ、エネルギーを大量に使うことで生産力を上げてきました。その結果として人間の生活は豊かで快適なものとなり、日本もその恩恵を受けています。ところが、ものにあふれた生活が行き過ぎてしまい、現代社会は古いものを捨てて新しいものと取り換える社会になっています。
江戸時代は里山で育った木材を薪や炭という燃料として使い、森林の復元力の範囲で生活していました。つまり人間の生活と環境のサイクルが合っていたのです。今、大量に消費されている石炭や石油といった化石燃料は、何億年という長い年月の中で生み出されたものです。それを現代社会は、地球規模で見ると短期間で使い切ろうとしているのです。
江戸の長屋の一角(150年前の再現、深川江戸資料館)
手前:共同水汲み場
奥左:共同ごみ箱
奥右:共同トイレ
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